ニュースからみた政策と行政法

ある日突然、行政庁からの呼び出しが・・・?!

 みなさんが普段日常的に目にするニュースーーー。四六時中膨大に報じられるニュースのなかには、行政庁による行政指導、助言、勧告や、事前届出規制、警告、業務改善命令、是正命令、排除措置命令手続、課徴金納付命令手続、緊急停止命令手続、意見申述・聴取、聴聞、弁明の機会、行政処分といったことばに聞き覚えのある方も多くいらっしゃることでしょう。

行政庁は法的根拠なしでも“やってくる!”

 これらには、法的根拠が必要なものもあれば、法的根拠不要なものもあります。行政庁側の視点では、所定の手順に従って行政行為を行わないと違法の評価を受けるものもあります。一般に、公務員のみなさんは多くの場合本当に大変優秀な方々ばかりですが、その一方で裁量権を逸脱して過重な要件を課してくるという話も日常的によく耳にします。

行政規制とは?

 また、みなさんがこれから営みたい事業の内容によっては、法令で定められた許可や認可、免許を取得しないと開業できないなどの規制があります(行政規制と言います)。国内には1万種類を超えるとも言われる行政規制があり、その数は日々増加する一方になっています。

 この許可を取得するためには事前に満たすべき要件が膨大にあり、極端な例では同じ行政庁でも担当者が異動するだけで要件が加重減軽され変更になって困ったといった話もよく耳にします。最終的に厳しい要件をすべてクリアするにはA4の厚み10数cmの分厚いバインダーの書類群のボリュームになる高難度の規制も多くあります。

 一般に、私たち国民の社会活動は本来自由のはずですが、誰でも何でも自由に行ってよいとすると誰かが弊害を被る場合があり、社会的影響が大きくなってくると、それまで自由だったものにも、新たな規制が掛かってくることになります。

ニュースと密接な行政規制

 それらは法律であれば議会である国会での可決・制定が必要で、多数派を構成する政党の政策が大きな影響を持ってきます。実は、例えば毎朝宅配される新聞やテレビ・ラジオから流れてくるニュースには、新たな行政規制、既存法規制の問題点に関するネタが満載になっていることをみなさんご存知でしょうか?それらの大半が、特定行政書士の職域の射程に入ってくると言っても過言ではないと思います。

法令解釈に迷ったら・・・?

 また、既存法令であっても、法令用語の解釈が判然としない場合、自社の事業が規制に該当するか否か判断できないケースもあると思います。この場合には、国でいえばノーアクションレター制度という所管行政庁への法令適用事前確認制度がありますが、この制度はあまり知られていないかもしれません。

ところで行政とは?

 行政とは、あらゆる国家作用から司法作用と立法作用を除いて残った作用すべてを指します。控除説です。

では、行政法とは?

 行政法という名前の法典があるかと言われればNоです。行政法とは、例えば私人と行政主体の関係(行政の外部関係)を規律するあらゆる法すべてを指します(他にもありますが)。多くの場合、ニュースでよく聞く特措法等の法令名は間違いなく行政法であると言えるでしょう。

では、特定行政書士とは?

 特定行政書士とは、端的に言えば行政法令の専門家です。法的紛争性を有する行政庁への不服申立手続、具体的には処分取り消し等の審査請求・再調査の請求・再審査請求の代理権が与えられている者です。紛争顕在化前までに弊社または一般行政書士の何らかの関与のある事件について代理できます。これらの法律事件に関する限りは、特定行政書士の代理権の範囲に限定はなく、弁護士と同様に単独で、口頭での代理も当然含まれます。口頭意見陳述などの手続で処分庁とは異なる審査庁(=最上級行政庁。多くの場合地方なら市区町村長か都道府県知事。国なら各省大臣または内閣総理大臣)に当事者と一緒に出頭し、代理人として発言する重責も担います。代理人として記者会見することもあるでしょう。

 街なかの一般の行政書士とは異なって、特定行政書士は法定考査に合格し弁護士法72条の一部制限が「解除」されている者になります(行政書士法を所管する総務省の公権解釈)。弊社のような特定行政書士業務が行える行政書士(法人含む)は、行政書士の中でもおよそ1割しかいません。

刀を抜かずして天地万物と和す

 といっても、特定行政書士は必ずしも常に行政庁と敵対する関係ではなく、紛争化の前に要件を行政庁側と私人間双方で整理し、行政庁側に違法・不当な点があればソフトに適法な対応を促し、紛争を未然に予防し円滑に世の中を回す役割も担います。

 将来の紛争対応を見据え、何気ない最初の申請段階から代理人として行政庁側とのやり取りを記録に留め、本人申請(クラウド生成サービス利用の場合を含む)では抜け落ちてしまう証拠の収集活動も併せて行います。その記録をもとに、場合によっては行政庁側の不作為の違法を争ったり、加重要件の違法を主張したり、第3者に対し行政指導や処分等の求めを行ったりということもあるでしょう。

 一番初めに紹介したニュースワード、行政庁による行政指導、助言、勧告や、事前届出規制、警告、業務改善命令、是正命令、排除措置命令手続、課徴金納付命令手続、緊急停止命令手続、意見申述・聴取、聴聞、弁明の機会、行政処分などといった手続は、すべて特定行政書士が代理人として当事者と共に立会い、不服応対可能な業務にあたります(但し、課徴金制度が導入されている法令のうち独禁法などの例外を除く)。

 特に、意思決定にスピード感が求められるビジネスの最前線において、行政庁との間で紛争化したら訴訟提起し3審制で確定判決を得るのは膨大な時間と労力を消費するだけでなく、成長タイミングを逃しチャンスを逃すことに繋がりかねません。

 待ちの姿勢から攻めの姿勢へと作戦転換し、これから事業展開したいビジネスについて行政規制当局と折衝し、場合によっては古い規制の変更を求めて新時代のメルクマールとなる新基準、審査基準、ガイドライン、グローバルスタンダードを策定する過程そのものに果断にコミットしていくことが求められる場合もあると思います。

 このようなニーズは、イノベーションを通じた社会変革が急速に進み最先端テクノロジーと公共政策の高度な融合が求められる現代においてはとりわけ大きいものがあると思います。特に、急進的なスタートアップ・ベンチャーや規模の大きな有名企業においては恒常的にそのニーズがあると思っています。